fusionplace - 経営管理×ITの広場

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fusion_place の料金設定はなぜリーズナブルなのか?

こんにちは、フュージョンズCEOの杉本です。

今日は、「fusion_place の料金設定はなぜリーズナブルなのか?」という、よくうかがうご質問にお答えしたいと思います。

もちろん、他社製品のすべてと比べて安価、というわけではありませんが、比較の俎上に載るような予算管理/経営管理ツールと比べると、多くの場合、fusion_place が安く、特に海外製品と比べて安価な傾向はあるかと思います。

ソフトウェアやクラウドサービスには基本として「単位原価」というものがありません。開発費は契約数に比例して増大するものではないからです(運用費に関してはある程度相関がありますが比例的というほどではありません)。従って、どのように値付けするかは大変難しい問題で、様々な要素が絡んできます。

料金設定の背景

じっさい、fusion_place の料金を安価に設定している(できている)理由は単一ではありません。

開発経緯

fusion_place は、当初、創業者ひとり(私です)によって開発されました。初期開発には数年を要しましたが開発コストはわずかで、かつ、フュージョンズ社の固定費負担になっていません。このため、手ごろな価格水準とすることが可能でした。今では開発メンバーも増えましたが、それでも、初期コスト負担の小ささの影響は大きく競合他社の多くに比べてローコストな体質だと思います(開発コストを抑制できる他の理由は、少数精鋭主義だからです。これについては「アーキテクチャ」で後述します)。

想定市場規模

弊社としては、現場ユーザーへの浸透を図ることで、競合他社よりはるかに多数のユーザーにお使い頂くことを想定しています。すなわち、おひとりあたりでは安価でも総額としては開発費を十分に回収できるビジネスモデルです。「現場力を喚起する経営管理」というコンセプトを言語化したのはここ2,3年ですが、上記は、創業以来の戦略です。当初数年は、十分な収益を得ることができず、メンバーみなでコンサルティング報酬を稼ぐなど苦労しましたが、ここ数年でクラウドサービスの料金収入を主とする収益基盤を確立できました。

意外に感じられるかもしれませんが、SaaSビジネスにおいて、サービス料金を高く設定しておいて後から下げることは難しいものです。高い料金でご契約頂いたお客様の信頼を裏切ることになりかねないし、料金引き下げに伴って既存のお客様が新料金体系に移行すれば、これまで築いてきた収益基盤が一瞬にして崩れかねません。ですから、将来は顧客基盤を広げて安い料金体系で提供したいと思うなら、最初から安い料金体系を設定し、最初は血を吐いてでも、それで収支が合うよう契約件数を積み上げなければなりません。

こうしたやり方は、SaaS ビジネスでは非正統的だとあきれられると思いますが、弊社はそれに成功したと考えています。

アーキテクチャ ――業務アプリケーション型とプラットフォーム型

fusion_place は、部門別予算管理という特定の業務に特化した「業務アプリケーション型」ではなく、商品/顧客別の採算性・KPI管理、原価計算、研究開発費のテーマ別管理、財務連結とその周辺など様々なしくみを作ることができる「プラットフォーム型」のアーキテクチャを採用しています。プラットフォーム型アーキテクチャでは、ひとつの仕組みで様々なユーザーニーズに対応できる可能性が生じます。fusion_place はこの点を徹底しているため、開発費とその後の維持管理のコストを抑制できています。「業務アプリケーション型」では、具体的な要件ごとに機能を開発するので、プログラム規模が膨れ上がり、コスト・品質両面で困難が生じます。

業務アプリケーション型とプラットフォーム型の違いがわかりにくければ、住所録管理ソフトとエクセルを思い浮かべて頂けるとよいかもしれません。前者は住所録管理に特化した業務アプリケーション型ソフトです。後者は、ユーザーの工夫次第で住所録管理を含む広範な用途に使えるプラットフォーム型ソフトです。fusion_place は、エクセルよりは経営管理分野に特化していますが、その分野内で必要な柔軟性を提供し、利用上の自由度が高いプラットフォーム型ソフトです。

業務アプリケーション型とプラットフォーム型について、ベンダー側の開発コストの面から比較しましたが、ユーザーの観点からより重要なのは、要件への柔軟な対応の可否です。業務アプリケーション型の場合、多くの企業に共通する業務ニーズしか対象としづらいという制約があります。そのため、個々のユーザー企業にとっては帯に短しタスキに長し、という面がどうしても避けられません。結局、足りない部分をエクセルで埋めていくということになります。プラットフォーム型では、もちろん製品デザインの出来・不出来によって違いが出るところではありますが、そうした「足りない部分」も含めシステム化していくことが可能です。業務アプリケーション型の経営管理システムを使う一方で、それを補完する形で fusion_place をご利用頂いているケースはごく普通にあります。

部門別予算管理のように市場規模が大きな分野においては、プラットフォーム上で白紙から設定するのではなく、これまでの経験を集積したサンプルやテンプレートを用意しています。そして、サンプルやテンプレートの一部は、公開もされています。今後は、需要の多い分野においては、テンプレートの完成度をより高めて、それ自体を商品としてご提供して参りたいと考えています。

プラットフォーム型を前提としてテンプレートを組み合わせるという道具立てで、個別にアプリケーションを開発しても採算が合わないようなニッチ領域も含めてデジタル化の俎上に載せていく、というのが弊社の構想です。

ちなみに、こうしたアーキテクチャの選択は最初にご説明した開発経緯と密接に関係しています。

少人数・小コストでプロダクト/サービスを開発しようとすれば、ひとつの仕組みでお客様の様々なニーズに対応できる「プラットフォーム型」が合理的な選択になってきます。反対に、資金が潤沢で多くの開発メンバーを抱えることができる企業は「業務アプリケーション型」を選びがちです。というのは、「プラットフォーム型」の場合、開発規模は小さくとも、汎用性の高いしくみを提供することに難しさがあって、ユーザー要件と技術の双方に精通した少人数の優秀なチームが知恵を結集しなければ生み出せないからです。頭数だけ増やしてもスケールしないということですね。

「プラットフォーム型」は、貧者のためのアーキテクチャ、もっと言えば、貧者が世界を獲るためのアーキテクチャなのです1 。私たちはそれを選択しました。どうしてかって?

その方が面白いじゃないですか^^

パートナー様との役割分担

経営管理のような複雑な領域でツールを十分に使いこなすには、ある程度のコンサルティングが有用です。ツールを知悉しているベンダー自身がコンサルティングをするのが一番いいと感じられるかもしれませんが、ツールを進化させることとコンサルティングで稼ぐことの間には、コンフリクトがあります。 コンサルティングビジネスには、ツールに機能上の不足があればそれをタネに稼ぐことができるという側面があります。不足を補うために様々な工夫が必要になるからです。こうした工夫それ自体が悪いわけではないですが、ベンダーのビジネスにおいてコンサルティング比重が大きい場合、ツールを進化させようという意欲をくじいてしまう面もあるのです。つまり、完成度の低い製品を安価に売ってカスタマイズで稼ぐというビジネスモデルに落ち込んでしまいます。

fusion_place は、ツールとしての柔軟性が高く、かつ、仕様や使い方のノウハウも公開されているため、開発元である弊社以外でも導入支援が可能です。実際、多くの案件はパートナー様が導入を支援されています。そのため、弊社は、営業とコンサルティングのために大きな組織を持つ必要がなく、プロダクトとサービスの進化にフォーカスしています(お客様の想いやペインを理解して製品にフィードバックするために必要な範囲で、自社での営業とコンサルティングも行っています)。そのことがまたローコスト経営につながっています。

お客様からすれば、ニーズに合ったパートナーを選択することが可能ですし、一方で、パートナー様にとっては、プラットフォーム型で、かつ、ツールとしての仕様が優れていることから、ツールの制限の回避策にではなくお客様のニーズの実現に注意を集中でき、高採算なビジネスの構築が可能です。高採算などというと、パートナーが儲けているということじゃないかとお考えになるかと思いますが、パートナー様が適正に稼げることは、お客様にとっても大変重要です。稼げない組織に良い人材は集まらず、それは結局、お客様へのサービスの品質に跳ね返ってくるからです。

まとめますと、ベンダーである弊社は迷いなく製品を良くしていくし、その製品でお客様のニーズに即した価値を提供するという面では複数のパートナー様に切磋琢磨して頂ける、そういう構図を作りたいということです。それができれば、弊社としてローコストを維持しながら、市場は広がっていくということになります。

そして、エコシステムの形成へ

とはいえ、製品が改善され、設定の手間が減っていくとすれば、パートナー様の利幅は逓減していくのではないでしょうか。

同じことをやり続けている限りそうです。

一方で、製品の不断の改良は、今まで思っても見なかったことを可能にします。弊社がご提案しているトランザクションベースド・プランニングはその一例です。これは、現場で行われている予算消化状況の台帳管理と全社レベルの予算管理を統合することで、より機動的な予算管理を実現しようという取り組みです(ちなみに弊社自身の予算管理もこれを採用しています)。新たな地平を開く、すなわち、従来は実現できなかったような経営管理を実装していく。そうすれば、プロジェクトがお客様にもたらす価値を増大させながら、パートナー様としてビジネスを拡大頂けます。経営管理全体のパイを大きくするという発想です。

fusion_place は、優れた機能性と柔軟性、軽量で取り回しが容易であること、スケーラブルであること、という一見相いれない特性を同時に実現したプラットフォームです。そして、そうした特性は、非常に多くの適用領域を生む可能性を含意しています。

小売業における52週別売上管理、医薬業での実消化レポーティング、ホテル業界固有の管理会計であるユニフォームシステム、製造部門の原価計算、人事部門における職務等級別の人員数・人件費管理、設備投資管理、グローバル需給計画とそれに連動した連結予算編成... 弊社の若干の経験を踏まえると、それぞれの領域に特化して十分な収益規模と採算性を備えたビジネスを展開するブティック型コンサルティングファームが今後現れて、まったく不思議はありません。ユーザー企業様とそうしたコンサルティングファームの間で人材の交流も起きるでしょう(現に弊社には、ユーザー企業の経理/経営企画部門出身のコンサルタントが複数名在籍しております)。

fusion_place は、ユーザー様にとっての「経営管理プラットフォーム」ですが、それぞれに個性あるパートナー様がビジネスを展開する土台、すなわち「経営管理ビジネスプラットフォーム」にもなりたいと思います。今形成されつつあるそうしたエコシステムが成長し、パートナー様のビジネスが成長すれば、そして、私どもがリーズナブルな価格を維持し続ければ、先に述べた現場ユーザーへの浸透と相まって、従来型の経営管理システムで期待できるレベルの何倍もの人々を経営管理システムの領域に受容することができると期待しています。

これは奏功するか

冒頭に挙げたご質問は「こんな料金水準でフュージョンズは大丈夫なのか、つぶれないのか」というご懸念を伴っている場合が多いのですが、やみくもに安価に設定しているのではなく、一定のビジョンのもとに安価な料金設定に固執していること、そして、実際にそれで回るビジネスモデルになっていることをご理解頂ければ幸いです。

格好よく言えば「ビジョン駆動型料金設定」となるでしょうか。

経営管理システムの領域では、欧米で過去にいくつもの製品が生まれましたが、結局、ERPベンダーに買収されてその1モジュールになるとか、大手に買収されたもののBI等の既存製品系列とかぶるとみなされたのか、顧客ベースだけ引き継いで製品は打ち切られる(あるいは放置される)といった具合に、いまひとつの結末を迎えた製品が多いように思います。それらが市場を切り拓けなかった理由は色々ありますが、その中でも大きな要因として、価格を高く設定しすぎたために経理部門や経営企画部門だけが使うニッチ製品になってしまったということがあると思います。 私たちはその轍を踏む気はありません。

経営管理システムの利用者が従来通り経理・企画部門+α程度にとどまるならば2 、料金水準に関する私どもの意思決定はいまひとつであって、もっと高くお売りした方がビジネス的にはよかったということになります。反対に、目論見が当たって経営管理システムのご利用のすそ野が広がり、潜在ユーザー数が十倍、二十倍になれば、私どもの料金設定は先見の明があったということになります。

昨今では、1,000名以上でご利用頂けるお客様が増えてまいりました。こうした事例は、現場のニーズを的確にとらえることができれば経営管理システムユーザーのすそ野は広がるという私どもの仮説を裏打ちするものと受け止めております。また、経営管理の分野では、「FP&A」というキーワードのもと、経理・企画部門が事業部門に浸透していく動きがが顕在化し始めております。私どもはこれも、現場力を喚起する経営管理が重要だという私どもと同様の認識を経営管理に携わる皆様の多くがお持ちであることの証左と捉えております。

皆さまはどちらを、魅力的な未来とお考えになるでしょうか。

追記:

これを読んで fusion_place の導入コンサルティングビジネスに興味を持たれた企業様、あるいは個人の方、是非、ご連絡下さい。 fusion_place は、小規模なチームでの導入も可能です。 実力あるパートナー様はいつも大歓迎です。

修正履歴:

2024/2/9 業務アプリケーション型とプラットフォーム型について、ユーザーにとってのメリット/デメリットを加筆。

fusions.co.jp


  1. エクセルと住所録管理ソフトを比べると、前者の方が開発コストがかかっていることは明らかでしょう。ですから、プラットフォーム型が「貧者が世界を獲るためのアーキテクチャ」だというのは不思議に響くかもしれません。しかし、最初の表計算ソフトである「VisiCalc」は、2人の開発者によって2か月で書かれました。プラットフォーム型は本質的にはカネがかからないのです(デザインの才能と技術力は要求されます)。マイクロソフトがエクセルにすさまじいほどの機能を盛り込んで巨大なソフトウェアシステムに育てたのは他社の追随を排除するためであって、プラットフォーム型が本来そうしたことを要求しているわけではありません。
  2. fusion_place 自体は、経理・企画部門内だけで小規模にご利用頂くことも可能です。そうした小回りの利くツールでなければ、逆に、事業部や営業・生産・R&D・人事などの機能部門でお使いいただけません。ここで問題にしているのは、製品機能が小規模向きか大規模向きかということではなく、安価な利用料金をご提供するという私どものビジネス・デシジョンが奏功するかという点です。規模に関して言えば、いずれの規模でも、fusion_place には優位性があると考えています。