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予算管理システム導入時の考慮点 ③ーそして現場力を喚起する経営管理へ

経営管理メールマガジン Vol.10 です。

前々回前回、予算管理システムを整備するにあたって月次報告/予実管理から稼働を開始することをお勧めし:

  • トップと現場にとって分かりやすい管理会計システムを提案すること
  • 現場部門に対する情報提供を優先すること
  • 早く運用にのせること

を強調しました。そうした考えをもとにプロジェクトを開始したとして、その後はどのように進めればよいのでしょうか。今回は、それについてお話しします。

第1段階:現行予算管理+αのシステム化

月次報告/予実管理から稼働を開始するとして、その次は年度予算編成、さらにその次には、年に数回の見込(修正計画)という具合に、テンポよく段階的にシステムをカットオーバーしていきます。

最初から全部作りこむのではなく、カットオーバーのタイミングに合わせて、必要な設定を順次加えていくことで、実運用と平行して次のカットオーバーの準備をしていくことができます。

見込(修正計画)が初めての試みとなるのであれば、実際に一度やってみて、その結果を踏まえてシステムを改善するのも適切です。

システム化範囲にもよりますが:

  • 予算編成での集計や配賦の作業はスピードアップされて残業が減り、
  • 月次報告での予実差異コメントはDB化されて検索可能になり、
  • 見込みも四半期に一度程度とりまとめて、予算や前回見込みと対比できる、

というように相当の効果が上がるはずです。経理・企画部門のメンバーも、エクセルファイルのバージョン管理と串刺し集計から解放され、ツールを用いた分析などに時間をシフトすることができているでしょう。

この第1段階を通じて、経理・企画部門のメンバーが経営管理ツールに習熟していくことが大事です。fusion_place のようなツールは、エクセル連携機能、自由なドリルダウンレポートの作成など、ユーザー自身がシステムを拡張できる仕組みを提供しています。そうした仕組みをフルに活用するには、ユーザー自身がツールに習熟することが極めて重要です。その点をおろそかにすると、結局、お仕着せのシステムの周りに従来通りのエクセル業務が残ることになってしまいます。

第2段階:現場力を喚起する経営管理

第1段階では、大枠としては、経理・企画部門の視線中心で予算管理システムを整備しました。前回述べたように:

  • 事業の実態に即して管理会計科目を見直す
  • 予実データを現場部門に届ける

といった現場への配慮も織り込みましたが、焦点は、予算や見込、予実差異理由といったデータを各部署から収集して集計/分析する業務を効率化することでした。

第1段階だけでも、経理・企画部門としては十分な成果を達成したと言えます。一方で、全社的な経営管理のレベルアップという観点から言えば、まだまだできることがあります。

営業部門では、予算を作るにあたって、得意先別(担当別)や商品群別に計画を策定し、目標を設定します。メーカーならば、品目別の販売予定数量について、たぶん製造部門と調整しているでしょう。研究開発部門では、部門全体の予算とは別に製品別の開発費用の積み上げや見込みに苦労しているかもしれません。部門に関係なく、現場の部署では、広告宣伝費・IT関係費など裁量的な経費について、科目合計でいくらというだけでなく、案件別に予算消化状況を管理するために、エクセルで台帳管理しているかもしれません。

予算管理にまつわる現場部門の仕事は、予算を主管する経理/企画部門からは見えづらいものです。しかし、予算や見込みの質を向上するには、こうした、現場部署で行われている予算管理のレベルアップがキーとなってきます。

これら現場部門の業務をITで支援しつつ全社的管理会計と結びつけることで、管理会計/予算管理を次のステージへ持ち上げようとするのが、弊社が提唱している「現場力を喚起する経営管理」です。

現場の各部門の仕事だからシステム化も現場主導でやればよい、という見方もあると思います。しかし、現場にクローズしたシステムでは、全社的な経営管理への貢献は半減するでしょう。

例えば、上述した裁量経費や投資の案件別予実管理を、弊社では「トランザクションベースド・プランニング」と呼んでいます。これには、現場部署での案件別の予実台帳管理をシステム支援するだけでなく、案件別予実データを全社的な予算管理データベースに統合して、事業部門長やトップがいつでも見れる環境を整え、状況に応じて的確に手綱を引けるようにするという意義もあるのです。

営業部門など機能部門の予算管理も同様です。どの市場セグメントを攻めていくか、客単価はどの水準にもっていくのかといった、現場活動に関する営業部門の意志が予算として数値化されることで、トップとのコミュニケーションが促進されます。

「現場力を喚起する経営管理」のためのシステム構築にあたっては、現場を統括する部署のコミットメントとともに、経理/企画部門のリーダーシップが重要です。そして、リーダーシップを実質的に裏付ける上で、先行するステージでツールに精通し、プロジェクト遂行力を身に着けてきた経理・企画部門のメンバーの存在が大きな意味を持ちます。

現場力を喚起する経営管理と21世紀のソロバン

現場力を喚起する経営管理のためのシステムツールはなんでもよいというわけではありません。ひとつのツールですべての部署の経営管理ニーズに対応し、大量データの多次元集計/分析に耐えるのみならずデータ加工ニーズも吸収でき、経理/企画業務担当者が道具として使いこなせる、そういった特性を備えたツールが必要です。いわば「21世紀のソロバン」です。

  • 現場のタイプごとに異なる要件に対応するために、柔軟性あるツールでなければなりません。つまり、エクセルのように変化自在でなければならず、かつ、エクセル最大の問題であるメンテナンスの煩雑さを回避できなければなりません。
  • 多軸での高速集計に適した「多次元データベース」を備えていることが重要です。経理・企画の予算管理では、部門別・勘定科目別といった少数の軸で十分な場合もありますが、現場部門では多軸に対応できることが必要です。例えば、営業部門では、部署別以外に、市場別・商品別・アカウント別といった軸に沿った集計と分析を高速に実行できることが必要です。こうした要件には通常のDBでは対応できず、多次元データベースというそれに特化した技術が必要なのです。
  • 要約データだけでなく詳細データを取り込んで高速検索でき、かつ、加工できる機能が必要です。例えば、前述のトランザクションベースド・プランニングを行うなら、そうした加工機能を用いて伝票実績データを案件に紐づけなければなりません。BIツールのように照会専用ではだめです。
  • 最後に、現場部署も含めて経理/企画に携わるひとびとが道具として使いこなして自分の能力を拡張できる機能性、使い勝手の良さ、軽快さが必要です。先に述べたエクセル連携機能、前回ご説明したようなドリルダウン画面を自由に作ることができる機能などはその例です。

逆に、そうしたツールがあるならば、経理・企画部門のコアメンバーが、他の部署の経理・企画担当者も巻き込みながら(そして必要に応じて外部からの支援を受けながら)、そのツールに習熟してシステム化を進めるというスタイルをとることができます。そうすれば、重要性の高い現場部門から始めて、一歩ずつ、経営管理システムを整備していくことが可能です。そして、プロジェクトが進むにつれ、会社全体として、施策を共有して検討する力、将来を見通す力、施策の実行を制御する力が高められていきます。

それが、「現場力を喚起する経営管理」のビジョンです。

現場力を喚起する経営管理については、事例紹介も含め、様々な機会をとらえて発信して参ります。直近では、このテーマでのオンラインセミナーを毎月開催しています。

ご興味をお持ち頂ければ、ぜひ、私どもにご相談ください。