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Vol.9 予算管理システム導入時の考慮点 ②

前回は、予算管理システムを導入するにあたって、年に一度の予算編成からではなく月次管理から始めると良い、というお話しをしました。

じっさい、月次管理をシステム化する際に、何を狙い、何を考慮すべきでしょうか。今回はそのテーマでお話ししたいと思います。

トップと現場の支持を得る

月次管理に限ったことではありませんが、システム化にあたって大事なのは、ステークホルダー(関係者)のニーズを的確にとらえ、その支持を得ることです。予算管理を含む管理会計システムのステークホルダーは、主に以下の3者です。

  • トップ
  • 現場部門
  • 経理・企画部門

このうち、トップと現場部門は、離れているように見えますが実は表裏一体です。いずれも事業活動が関心の中心ですから、立場は違えど興味は似ています。そして、この二者のいずれもが、経理・企画部門のいう事は専門的過ぎてよくわからん、と思っている会社が多いのです。

ですから、プロジェクトを推進する上でのポイントは、トップと現場部門の支持を得ることに尽きます。

経理・企画部門内では、月次管理のために膨大なエクセル作業がなされています。それをなんとかしたいのは当然です。弊社でも「エクセルメタボ解消」と銘打って、そのお手伝いをさせて頂いています。

ただ、そのテーマを中心に据えると、トップからは「経営・企画部門内のエクセル作業改善だよね」と受け止められてしまい、投資が認められない場合もあります*1

支持を得る進め方

トップと現場部門の支持をどうやって得ればよいでしょうか。これは難しく見えますが、コツがあります。

まずひとつ。トップと現場にとって分かりやすい管理会計システムを提案することが大事です。経理・企画のいう事は難しくてわからん、と思われている、その裏をかくのです。新鮮な驚きがあり、受け入れられやすくなります。

例えば、弊社Webの「管理会計:月次報告」のページにある財務会計管理会計のP/Lの比較をご覧ください(下記に再掲)。

クラウドサービス企業におけるP/L例
クラウドサービス企業におけるP/L例

このように、月次報告資料の内容を少し工夫するだけで、トップと現場部門にとっての分かり易さは顕著に改善されます。多くの組織において、財務会計の科目体系は、各社独特のビジネスとの適合性をほとんど考慮せず、教科書的に決められています。ですから逆に大きな改善の機会がここに眠っています。

ふたつ目は、現場部門に対する情報提供を優先すること。私どもが参画させて頂くケースでは、明細レベルの実績データを fusion_place に投入して現場部門に提供することから始めるケースが増えてきています。予実P/Lの予算欄に数字が入っていなくても構いません。上述のページでご紹介しているように、要約P/Lを起点として、行や数字をクリックしていけば、部門別・科目別といった詳細な内訳に逐次ドリルダウンでき、さらには、各実績金額の裏にある伝票データまで辿れるようにします。

これは、現場部門に大変ウケます。これには私たちも、最初、驚きました。実績をクリックして伝票明細まで遡れる、という当たり前のことでこんなに喜んで頂いてよいのだろうか、これまで重ねてきた管理会計システム構築の取り組みの中で、私たちは何かとんでもない見落としをし続けてきたのではないか、と悩んだほどです。

ただ、考えてみれば、すでにBIツールがあるかもしれませんが、検索条件をいちいち設定してボタンを押さなければならないし、私どもがお邪魔するお客様では、検索結果が表示されるのに時間がかかって、その間にコーヒー一杯飲めてしまうことさえあります。手軽にすばやく間違いなく情報にアクセスできることの価値は想像以上に大きいということでしょう。

私たちはたぶん、業績管理や管理可能利益といった管理会計のテキスト的テーマを信ずるあまり、事業活動を担当する現場の素朴なニーズと管理会計を結びつけることを見落としてきたのでしょう。

三つめは、早く運用にのせること。予算管理や管理会計の分野には、考えるべきことが色々あります。経理・企画のみなさんは配賦計算などを気に掛けられます。そういう業務要件を詳細に検討し始めると、半年程度は簡単に経ってしまいます。時間が掛かるほど、待つ側の期待値は高まって、そのハードルを越えにくくなります。そのうえ、トップや現場にとって、配賦などは正直いってさほど関心があるテーマではありません。毎月追いかけたいような情報ではないのです。システムの運用開始を半年待って、そういうものが出て来ると、がっかりしてしまいます。それよりも、2、3か月で、上述のように実績だけでも提供できるようにし、月次報告のP/Lのデザインを変えた方がよいのです。そうすれば、経理・企画が何をしているのか、トップや現場が理解できるので、その後のプロジェクトに追い風が吹きます。

プロジェクトの企画段階で、こうした進め方を明確にしておき、トップと現場が実感できる成果が出ることを訴求すべきです。それによって、支持を得ることができ、妥当な予算が付き、実際に大きな成果を挙げることができるようになります。

四点目として、経営者・現場に向けたシステム整備と並行して、経理・企画部門内のエクセルメタボ解消も進めるべきです。外からは理解しづらいですが、経理・企画が、複雑怪奇なエクセルシートの修正に足をとられて、前向きの分析や施策提案に割く時間がないといった事態に陥らないために、これが重要です。エクセル相手の奮闘にとられる時間を短縮すれば、売上構成比の推移、それに伴う利益率の変動の分析といった、より、ビジネスに結びついた業務に時間を割くことができるようになってきます。結局それが、トップと現場部門からの信頼につながります。

トップ向け・現場向けの取り組みと、経理・企画部門内の業務改善は、無関係な2つの取り組みではありません。経営・現場向けのサービスに fusion_place のようなツールを用いることで、そのツールが、経理・企画にとっての欠くべからざる業務基盤として認知され、中核的な担当者だけでなく、部門内の多くの人が利用する素地が作られます。それによって、業績分析力が向上するとともに、事業にマッチした経営管理の仕組みを構築するケイパビリティが醸成されていくのです。

システム構築――古い見方、新しい見方

経営管理システムの整備について、四つのポイントをご説明しましたが、読者の中には、違和感を感じられる方もいるでしょう。システム開発とは、もっとかっちりと、要件をきちんと定義して進めるべきものなのではないでしょうか。

実は、このあたりの事情は、近年、大きく変わってきているのですが、システム開発者よりむしろユーザーサイドの皆さんの意識がアップデートされていない面があります。

ひとつには「アジャイル」と呼ばれる開発手法が実践されるようになってきています。これは、早い段階でミニマムの要件だけを満たしたシステムを稼働に持ち込み、運用しながら逐次ブラッシュアップしていくという開発手法です。この記事でご説明してきた進め方もアジャイル的であると言えます。

もちろん、こうした手法が可能になってきた背景には、ソフトウェア開発のための技術基盤が整備されてきたという事情があります。

経営管理システムの分野で特に重要なのは、この領域に特化した基盤ソフトウェアの台頭です。特定業務分野に特化した基盤ソフトウェアを「ドメイン特化基盤」、略して「DSP(Domain-Specific Platform)」と私たちは呼んでいます。経営管理分野は、業種やPDCAの方式あるいは経営の考え方次第でシステム要件に大きなバリエーションが生じることが特徴です。そのため、従来型のパッケージソフトウェアでは要件を満たせないことが多く、それに対応してDSPが発達してきました。

fusion_place もそのひとつです。例えば、部門別P/Lの予実管理といった基本的なテーマからはじめて、製品群別や顧客セグメント別の売上高分析、あるいは、月次ローリング方式での見通し管理に進むといった段階的なシステム整備にも簡単に対応できます。それは、そうした漸進的改善を支援するという思想のもとに fusion_place がデザインされているからです。 程度の差はあれ、他の製品も同様の性格を強めていますが、その中でも fusion_place が極めて優れていることは、申し上げるまでもありません^^。

まとめますと、月次管理に関して、今回ご紹介したような漸進的なシステム整備は、決して絵に描いた餅ではなく、こうした開発手法とDSPの組み合わせによって現実に可能となっています。

じっさい、弊社や弊社パートナーがご支援させて頂いているお客様にも、最初の3か月程度でシステムを稼働後、1~2年掛けて、より包括的な予算管理あるいは管理会計のシステムを整備されているケースが多々あります。

次回はそうしたあたりについてお話ししたいと存じます。

*1:投資が認められない場合、機能制限なしで3名様までご利用頂ける無償版「fusion_place standard」をご利用頂くことも可能です。