報告資料や照会画面上で単月表示と累計表示を手軽に切替えることができるのは、fusion_place を使っていて日常的に便利なことのひとつです。
単月/累計は、地味に大変
財務報告や管理会計の資料では、単月表・累計表が頻出します。ひとつの表の上で単月値と累計値を並べて表示する場合もあります。こうした資料を作成するには、単月用と累計用、2系統の作業用シート群を、それ以外は同じ内容で作成するなど、面倒くさい対応が必要になります。
組織変更のつど、ほとんど同じ2系統のシート群をそれぞれ別個に修正するなんて、人間が与えられるべき仕事ではないような気がしないでしょうか。
fusion_place は、ひとつのシート上で単月ベースと累計ベースを自由に切り換えて数値を表示する仕掛けとして、「表示形式」というディメンション(=マスター)を提供しています。表示形式ディメンションには、以下のようなメンバ(=マスターデータ)が含まれています。
- 期別(Periodical)/PER
- 四半期累計(Quarter-to-date)/QTD
- 半期累計(Halfyear-to-date)/HTD
- 年度累計(Year-to-date)/YTD
ユーザーがレイアウトを自由に決めてデータを表示/編集できる「フォーム」画面でデータを表示するときも、DBをエクセルシートと連動させるアドインである「Excel-Link」 を使うときも、キー項目のひとつとして、上記の「表示形式」を指定することで、面倒くさい累計計算を fusion_place の多次元データベースエンジンが肩代わりしてくれます。この列には単月値、こちらの列には年度累計値を表示する、というように固定することも容易です。
予算を月ごとに入力しておけば、四半期・半期・年度で集計できることは当然として、各月の年度累計値(YTD:Year-to-date 値)や、四半期最初からの累計値(QTD:Quarter-to-date 値)を、なんの計算処理も書くことなく、キーの指定だけで表示することができるわけです。
(ちなみに、"Year-to-date" は「年度の最初から報告締日まで(From the beginning of the fiscal year to the reporting date)」という意味で、経理財務の領域では一般的な用語です。"Quarter-to-date" 等も同様です)
データ更新時には、期別値を更新すれば、四半期・半期・年度それぞれでの累計値もそれに合わせて自動的に最新化されるし、いずれかの累計値を更新すれば期別値が自動追随する設定も可能です。
なぜ「単月」ではなく「期別」なのか
表示形式は、地味な機能ですが、とても便利です。しかし、一点、気になることがあります。
なぜ「期別」は「期別」と呼ぶのでしょうか。「単月」と呼んではいけないのでしょうか。
これは自然な疑問ですよね。頻繁にお尋ねを頂くので、お答えしておきます。
理由は、期別/累計という区分が適用される期間が「月」に限らないからです。
月にだけ適用されるなら「単月」で十分です。例えば、「8月・期別」は8月1か月のことですから、「8月・単月」でかまわないわけです。ところが、「第4四半期・期別」は、第4四半期という「期」に限るという意味ですから(3月決算の会社なら)1月から3月の3か月の合計値です。ついでにいえば:
- 第4四半期・年度累計 … 4月~3月の12か月合計
- 第4四半期・半期累計 … 10月~3月の6か月合計
- 第4四半期・四半期累計 … 1月~3月の3か月合計
となります。「第4四半期・四半期累計」は、「第4四半期・期別」と同じですね。「第4四半期」じたい「四半期」ですから、四半期の初めからの累計値は、四半期である自分自身の期別値と同じだということです。
組み合わせて使う期間との関係でこのように長さが変わるから、「単月」ではなく「期別」なのです。ささいなことですが奥深いですね。
ツールは地味が大事! ―フィナンシャル・アウェアネス―
「単月」ではなくて「期別」が適切だ、なんて、普通のひとが考えてもみない(そしてあえて考える必要もなさそうな)知見も踏まえつつ、単月/累計のような、頻繁に行われる割に無駄に煩雑な計算を fusion_place は肩代わりしてくれるわけです。地味だけど賢い!
fusion_placeには、財務報告/管理会計領域で便利なこうした機能が随所に織り込まれていて、当社ではそれらを「フィナンシャル・アウェアネス」と呼んでいます。ツールが基礎的な財務知識を備えている、といった意味合いがこの言葉には含まれています。
財務報告や管理会計の分野では、会社の事業特性や経営の考え方にもとづくバラエティ豊かな表層の下に、地味だけど普遍的な原理やそれにもとづく仕事のやり方が埋もれています。そうした原理に注意を向け、担当する皆さんのちょっとした指の動きだけでその原理を適用してくれる「道具」を作ることが、経営管理ツールの作り手である私たちフュージョンズの仕事です。
基礎を組み込まれた地味なツールが、使い手の仕事の煩瑣さを解消し、使い手がより高みに向かう道を拓くのです。道具は地味、輝くのは使い手とそのチームです。
経営管理分野のツールをご覧になる時はぜひ、「このツールで、単月表示と累計表示、どうやって切り替えるの?」と尋ねてみてください。 皆さんが輝くためには解消することが必要な、地味で面倒くさい諸々のことがらに、そのツールがどのように目配りしているかを知る手がかりとなると思います。