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予算編成/予実管理の潮流 ~トランザクションベースド・プランニングとは

経営管理メールマガジン Vol.6 です。

■予算編成/予実管理の潮流
トランザクションベースド・プランニングとは~

近年、予算編成/予実管理を、勘定科目より細かい明細ベースで行いたいというニーズが顕在化してきており、私たちフュージョンズはこれを、「トランザクションベースド・プランニング」と呼んでいます。プロジェクト会計と似ていますが、粒度がより細かく、予算立案部署が個々の裁量で管理単位を設定する点が異なります。プロジェクトマスタによる集中管理は難しく、システム化するには多くの課題がある分野です。設備投資の管理の他、政策的経費の管理にもこのような方式を適用したいと考える企業が増えています。 この「トランザクションベースド・プランニング」という概念が生まれてきた背景、システム化のポイント、その実運用における効果などを見ていきます。

■予算の内訳を「各部署の裁量で」管理したいニーズ

管理部署と現場部署では管理したい体系、粒度が異なる場合があります。現場部署の上位の本部、事業部レベルでは使用用途等の明細を把握したいニーズはありますが、予算を統括する管理部署では細かい明細データには興味がないということもあるでしょう。一方、予算立案部署では、使用用途別の明細を積み上げて経費の数値を作成する、あるいは予算の枠が決まっていて、その枠を使用用途別に分解して予算立案するといった作業を行っています。そのため、予算との差異が生じた際に、自分たちが管理したい体系と粒度で実績データを保持し、予算と突き合わせて分析したいというニーズが存在します。立案部署の裁量で管理単位を設定したいのです。

■システム化のポイント

では、どのようなシステム基盤であれば、事業部門のこうしたニーズに応えて予算と実績の明細データを的確に管理することができるのでしょうか。Excel等のスプレッドシートであれば自由度は高いものの、明細データのような可変行数データを扱うことには様々な困難が付きまといます。各部門からデータを収集しようとしても、科目ごとの入力行数が可変なのでシートを保護できないなどの問題があり、管理部署側で集計するには手作業によるコピー、ペーストが必要になります。 一方、BIツールなどは大容量のデータを管理することには長けており、明細データを管理することも可能です。ただ、既存データの分析に重点を置いているため、予算編成や見通し業務には向きません。予算管理向けソフトは、様々な切り口での数値集計に特化しており、経費の使用用途、投資目的の説明や分類などの文字情報を同一のデータベースに保持しレポーティングの対象とすることは難しいケースが多いです。

予算編成・予実管理業務を円滑に遂行するための情報システムの要件は以下のようになるでしょう。

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1. 明細レベルで予算の追加、変更、削除ができ、勘定科目等に集計ができること
2. 勘定別等の予実サマリ情報から明細情報にドリルダウン分析ができること
3. 予算の使途、実績の摘要など文字情報を同一のデータベースに保持できること
4. 予算と実績を明細ベースで突合せわせることができること
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では要件の内容を順番に見ていきましょう。

トランザクションベースド・プランニング~システム基盤の要件

1.明細レベルで予算の追加、変更、削除ができ、勘定科目等に集計ができること
明細情報を保持することができるのは当然として、予算編成の場面では、明細情報の追加、変更、削除を容易に行え、その都度、即座に勘定科目等の上位レベルに集計できる必要があります。例えば経費の明細を入力すると、瞬時に勘定科目別に集計され、損益計算書が作成される必要があります。

2.勘定別等の予実サマリ情報から明細情報にドリルダウン分析ができること
予実管理の場面では、予算と実績の差異が大きい項目について、勘定科目別等のサマリ情報からその明細情報に即座にドリルダウンして、内訳を把握・分析できる必要があります。さらには、勘定科目等の項目によってその明細の分析軸が異なることもあるでしょう。経費項目はセグメント毎に管理をする一方で、売上項目は取引先別にも管理するといった例です。こういった要件にも対応が必要です。

3.予算の使途、実績の摘要など、文字情報を同一のデータベースに保持すること
経費の使用用途、投資目的の説明や分類など非数値データを含む計画データを、数値データと同一のデータベースに保持できる必要があります。数値データと文字情報を別のデータベースに格納すると、そのデータベースに依存する照会や入力のための複数のツールを使い分ける必要があります。結果、専門的知識を持つ人しか入力表や分析帳票を作成できず、後々のデータ活用に支障をきたすことがあります。

4.予算と実績を明細ベースで比較することができること
予算の明細データをどの粒度、どのレベルで実績データと突き合わせて比較、分析、管理するかは、予算の明細を管理する上で最も重要なポイントです。システム化のためには予算と実績を突合するためのキーが必要になります。このキーの新規登録に手間と時間がかかるしくみだと、予算編成プロセスに支障をきたします。

トランザクションベースド・プランニングの意義

これまでの説明で、トランザクションベースド・プランニングについて、その帰結である明細ベースの予実管理を含めて、イメージを持って頂けたと思います。ここであらためて、トランザクションベースド・プランニングの意義を整理しておきましよう。

まず、予算を立案する現場の各部署では、現状でも、会計システム外で支出項目を台帳管理している場合があります。管理しなければ、経理部門から予実差の説明を求められた時に的確に答えられないし、そもそも、予算消化状況の把握に支障があるからです。トランザクションベースド・プランニングは、現場部門のこのような業務をシステム化し、統一的な枠組みを提供します。

次に、経理部門や本部からみると、トランザクションベースド・プランニングは、予算の内容をホワイトボックス化し、その妥当性を評価しやすくするコミュニケーションツールとなります。立案部署からの予算案が勘定科目レベルに留まっている場合は、予算の根拠となる情報が予算シート以外の手段でやり取りされると思われますが、システムで一元管理されていないため、根拠の情報と予算値の整合を取りづらいのが現実です。結果として、予算の十分な審議を阻害する要因にもなり得ます。

予算編成を支援するシステムという視点では、従来、経理/企画など取りまとめ部門での集計、分析作業の効率化に主眼が置かれていましたが、昨今、現場部署を巻き込み、現場での経営管理を支援することにも重点が置かれるようになりつつあります。

トランザクションベースド・プランニングは、ITを武器に、現場指向の潮流を具体化しつつ、従来型予算管理がはらむ問題をも解決する取り組みであるとフュージョンズは考えています。

■後編について
トランザクションベースド・プランニング・システムの設計ー

今回は、トランザクションベースド・プランニングの背景にあるニーズ、システム基盤の要件、意義について触れました。次回は、この概念を実現するにあたって必要となる業務設計、およびシステム設計のポイントについてご説明したいと思います。

ポイントは2つあります。ひとつは、明細ベースで予算を管理するためのキー項目となる「予算番号」等の識別コードの発番方法です。こうした識別コードをマスター管理し、発番業務も集中すると、その発番待ちが予算編成のボトルネックになりかねません。この問題への対応の考え方です。

ふたつ目は、その識別コードをキーとして予算と実績をいかに突き合わせるかという点です。この点に関しては、会計システム側で伝票に入力欄を設けることが出来ればひとつの解となりますが、それができない場合もあります。

次回はこれらのポイントについて、実現のアプローチを、事例を交えて掘り下げてみたいと思います。

■事例紹介 ― 村田製作所様、設備投資予算管理

今月29日に開催される「経営管理に携わる皆様のためのカンファレンス/fusion_place day 2019」では、株式会社村田製作所様に「現場と共に革新する、グローバル投資管理」というタイトルでご講演頂きます。同社では、設備投資予算管理(予算編成及び進捗管理)の分野で、トランザクションベースド・プラニングの具現化ともいえるシステムを構築され、海外/国内のグループ各社に展開されています。是非、ご参加頂き、同社の取り組みをご共有下さい。