みなさま、こんにちは。
ユーザーリレーションズチーム(以下、UR)の鶴田です。
今回は、fusion_place v15 で新たに追加された@power() 関数により、管理会計や財務会計における「時間の流れを前提とした計算」がどのようにモデル内で簡潔かつ柔軟に表現できるようになったかをご紹介します。
Excel依存からの脱却:時間軸を含む計算の内製化
これまで、成長率・割引率・複利・定率などの計算は Excel に委ね、結果を fusion_place に取り込む運用が一般的でした。
v15 で追加された@power() 関数により、こうした計算を fusion_place 内で直接記述できるようになり、モデルの一貫性と柔軟性が大きく向上しました。
管理会計:成長率や割引率のロジックをモデルに統合
経営計画や投資評価では、年度ごとの成長や割引の前提を踏まえて将来値・現在価値を扱います。
@power() 関数を使えば、以下のような式で簡潔に表現できます。
成長率を用いた将来売上の算出例
例:2025年度を基点に3%成長を想定する場合、2028年度の売上は
このように、年度が増えても算出式は変わらず、長期計画にも対応しやすくなります。
割引率を用いた現在価値(NPV)の算定
従来は Excel 関数に頼っていた割引計算も、fusion_place のフォーム内で直接記述可能になりました。
これにより、基準/悲観/楽観などのシミュレーション値の切り替えや比較も、同一モデル上でスムーズ行えます。
※ NPV算出例の詳細については下記 Q&A をご参照ください。
フォームで正味現在価値(NPV)や内部利益率(IRR)を算出したい(fusion_place >= 15.0) - fusion_place Q&A
財務会計:固定資産の取得計画から減損までを一連で管理
@power() 関数は、固定資産のライフサイクル(取得計画の積み上げ → 償却シミュレーション → 会計計画への反映)をモデル内で一貫して扱う際にも有効です。
ここでは、減損会計の流れと合わせてその一例をご説明します。
(1)減損テストにおけるDCF算定
減損会計は将来キャッシュフローの見積りと割引計算が中心です。
この内、割引後CF(DCF)は以下のような式で算定できます。
割引率や経過年数を変更するだけで再計算が可能になり、シナリオ比較や監査対応にも柔軟に対応できます。
(2)定率法による減価償却のシミュレーション
将来CFの信頼性を高めるには、固定資産の取得計画や減価償却費のシミュレーションとの整合が重要です。
- 固定資産の取得計画をコントリビュータで積み上げ、承認後に元帳へ登録
- 取得価額を起点に、@power()関数で減価償却費を定率法でシミュレーション
この簿価差額をキャッシュフローに反映することで、減損テストとの整合性も保てます。
(3)予算変更の即時反映
PL予算や取得計画の修正が、減損計算にリアルタイムで反映される仕組みも構築可能です。
「投資 → 償却 → 減損テスト」という一連の流れを、同一モデル上で表現できるようになります。
実務への展開と監査対応
@power() 関数の導入により、Excel に依存していた複雑な計算ロジックを fusion_place に統合できるようになりました。 これにより、以下のような効果が期待できます。
- 割引率などの主要パラメータをモデル内で一元管理
- 再計算が即時反映によるシナリオ整合性の向上
- 式による算出根拠の明示
監査対応では「検証可能性」が求められますが、モデル内で再現性を担保できれば、監査人との情報共有もスムーズになり、説明責任の強化にもつながります。
まとめ:@power() 関数がもたらすモデリングの進化
@power() 関数は、単なる新機能ではなく、これまで Excel に埋もれていた計算ロジックをfusion_place モデル内で共有・可視化するための強力なツールです。
時間軸を含む会計計算を、より自然に、より一貫性をもって扱えるようになったことで、 部門間の試算や前提の整合も取りやすくなり、fusion_place の活用範囲がさらに広がっています。
URチームでは今後も、fusion_place の新機能が実務にどう役立つかを、わかりやすくお伝えしていきます。
次回もどうぞお楽しみにお待ちください。